義歯治療・義歯製作における歯科医師・歯科技工士の役職

 義歯製作において歯科技工士は、治療を行う歯科医師そして治療を受ける患者様に不安や疑念もたれるなどの信頼を落とすような技工物を提供しないように努めることは言うまでもありません。しかし、日常の技工作業の中で迷いや不安が伴う工程に直面する事もあります。

 また時として製作した技工物に対して予期せぬ高評価を頂いたとしても、偶発的なのか奇跡的なのか、と素直に喜べない心境に至ることがあります。すべての技工物の製作は歯科技工士の独断で作業を進めることはできず、歯科技工法で歯科医師の指示のもと製作すると定められております。

 つまり義歯治療ならびに義歯製作において、主導権は歯科医師にあり、歯科技工士は、患者様の高い満足度、支障をきたさない義歯治療を達成する義歯製作の責務を担う存在であるということが私の持つ定義であります。

「義歯製作における歯科医師と歯科技工士の不可欠なコミュニケーション 完結編」
2018年 有床義歯学会(JPDA)教育講演より

歯科医師との連携(立ち合い時)
歯科医師との連携(立ち合い時)

義歯製作に欠かせない歯科医師との共通認識(本編)

 前編では、義歯治療・義歯製作における歯科医師と歯科技工士の役割の解説をいたしました。しかし義歯製作を行う歯科技工士は義歯治療の現場で歯科医師がどのような医療行為をしているのかを認識している方はかなり稀少であると考えます。また歯科医師は歯科技工士の作業の詳細を認知していただく必要があると考えます。

 双方の業務を認識することで、各工程での共通認識が構築されます。この「共通認識」について詳しく解説いたします。歯科医師は歯科技工士に義歯製作の依頼をする際、製作に関わる指示ならびに伝達事項があります。また、歯科技工士は、義歯製作にあたり歯科医師からの具体的な指示ならびに、必要な資料を要望するべきだと考えます。一方、歯科技工士は技工物を届ける際、歯科医師に製作に伴う事象を伝達すべきだと考えます。歯科医師は技工作業の要旨を歯科技工士に要望する必要があります。

 即ち歯科医師、歯科技工士の備える共通認識は「伝達事項・要望事項が一致すること」であると考えます。内容がちぐはぐでは適正な技工物は製作できません。双方の共通認識が進展することで、積極的な対話が繰り返され、義歯治療及び義歯製作が円滑に進み、さらに患者様にご満足いただける適正な結果へと導くことは明確です。

 歯科技工士の立場での見解は、技工作業に迷いが生じ、不安要素を保持したままの技工物は、治療現場で支障をきたし、患者様に不安や疑心を生じさせる可能性は十分考えられます。目指す治療を「義歯のかたち」として患者様にお届けする根底には、歯科医師と歯科技工士の揺るぎない共通認識が在るからなのです。

「歯科医師・歯科技工士が有する総義歯製作における臨床的有意義な連携」

2020年 有床義歯学会(JPDA) WEB特別講演より